チンクエチェントの物語 第5回
これがチンクエチェントだ!!
掲載日:2003年4月9日

ここで、もう少し詳しくチンクエチェントを見てみましょう。
サスペンションとステアリング機構は、サイズは違いますが、セイチェントのものと同仕様になっています。
前輪部のサスペンションには、ラバーダンパーをはさんで2ヶ所でボディーに取り付けられる横置きのリーフスプリングが利用され、その上のアッパーアームはウィッシュボーン形状になってアップライトを支えています。
したがって、下部に位置するリーフスプリングは、不均一な振動のたびにスタビライザーとしての役割をも果たしています。

ウォームギヤとセクターギヤシステムのステアリングギヤボックスは、シンメトリックなリレーロットを通じて車輪を操作。
後輪部のサスペンションは、薄板のプレス加工によるV字形のアームを付け、弾力性のあるマウントブッシュ部分で揺れ動くようになっています。
このシステムでは、同軸に取り付けられた伸縮性ショックアブソーバーをもつコイルスプリングを採用。
ブレーキは油圧式のドラムブレーキで、各車輪に付けられています。
ブレーキシューには、新たにドラムとの間隔を調整させるための簡単な装置が付けられました。
手動ブレーキはボウデン方式の機械操作機構によって、後輪それぞれのブレーキシューに作動しています。
スチールホイールに付けられるタイヤのサイズは125×12。
ただし、Lタイプに限っては、ラジアルタイヤが取り付けらています。

電流回路は電圧12ボルトで、180Wのダイナモ(Dタイプより230W)を含み、エンジンクーリングファンと同軸に設置されて、クランクシャフトからつながるベルトで駆動。
スターターは、エンジンのフライホールのリングギヤにかみ合わされています。

エンジンスターターモーターは、前部座席の間にあるレバーを引き始動させます。
ヘッドライト(Fタイプより左右非対称レンズカットとなる)は40/50Wで、前部と後部のポジションランプと後部のブレーキランプには5/20Wの電球が使用され、後部のウィンカーランプは20W、サイドのウィンカーランプは5Wです。
その他には、ナンバープレートの照明や、ドアの開閉によって自動点火するルームミラーに組み込まれたルームランプ(1961年から)や、運転席スピードメーター内の油圧や充電やガソリン残料やライトなどの警告ランプが装備され、シンプルな中にも必要十分な装備となっていると言えます。

スピードメーター内及びダッシュボードに付けられているその他の表示ランプについては、車種によって少し違ってきますが、主にヘッドライトやウィンカーランプの表示が挙げられます。

クラクションはトランク内のフロントパネルの中央部分に付けられ(Lタイプまでで、後には車両前下部に付けられるようになりました)ハンドルに付けられたボタンで作動します。
ワイパーのスイッチはダッシュボードにあって、発売初期のモデルでは、再度スイッチを入れることによってのみ振り戻すことができます。
オートリターン機構を備えるようになったのは1964年から。
ヘッドライトとポジションランプの切替に関しては、1957年のノーマル(Normale)タイプから、ステアリングコラムに取り付けられた1本のレバーで操作できるようになっています。
初期のシリーズでは、ボッシュ(Bosch)タイプキーを回せばライト電源の入/切が出来るようになっていて、ウィンカーランプの操作レバーはダッシュボードの中央に付けられていました。

エンジンは、車体後部に設置され、クラッチとトランスミッションとディフェレンシャルギアとが一体になっています。
4サイクルで、ブロックはアルミニウム鋳物製、フィンの刻まれたの2つのシリンダーは鋳鉄製。
最初のモデルの排気量は479ccでしたが、後のモデルではパワーアップし排気量499.5ccとなりました。
シリンダーヘッドはアルミニウム鋳物製で、特別仕立てのバルブシートをもっています。
各バルブは一列に並び、シリンダーの垂直方向に対して12度の傾きをとっています。
Rタイプではロッカーアームがバルブシステムの中心からずれた位置に設置されていて、バルブ自体の回転でバルブシートに汚れが付きにくくするように改良されました。
カムシャフトには偏心リングとウォームギアがはめ込まれ、それぞれよってフューエルポンプとディストリビューターが操作されます。
ギア式のオイルポンプは、カムシャフトの後端に付けられており、オイルパンの許容量は1.665P。ポンプの作動により網状フィルターをもつストレーナーから吸い上げられた潤滑オイルは、まず、カムシャフトに送られ、そこから遠心式フィルター、クランクシャフトサポートに回っていってクランクシャフトの凹部に浸透し、そして、圧力作用でコネクティングロッドの先端にまで達するという仕組み。
その後、ピストンの上下運動によってシリンダーとピストンが潤滑されるわけです。
潤滑システムの通常の圧力は油圧2.5−3.0L/Cで、これが1.0L/Cに下がるとメーター内にある警告ランプが点灯する仕組みになっています。
内部にオイルラインをもつクランクシャフトは、パーライト鋳鉄製で、中央部にひとつだけバランサーをもち、両端に薄い支持ベアリングを持っています。
シャフトの後端部には発電機及びファンをVベルトによって駆動するプーリーが付けられていて、遠心運動によるオイルフィルター装置と一体化しています。

エンジンには、エンジンスタート時にマニュアル作動が可能なダウンドラフトキャブレターからガソリン供給が行なわれます。
点火装置は、バッテリー点火方式。
ディストリビューターは、遠心調節によるオートマチックガバナ進角機能を備えていて、点火プラグには冷却装置からのエアー漏れ防止のためにゴム製キャップがかぶせられています。
エンジンは強制空冷システムをとっていて、エアーを循環させるために、ベルト作動のファンと、温度によってエアー循環を調整することのできるサーモスタット機能をもつエンジンカバーが備えられています。
冷却エアーはオイルパンも冷却し、また、インテークダクトによってキャブレターにも送られます。
冬期には、この循環エアーはシリンダーを冷却した後に車内に送って、暖房として利用することもできます。
チンクエチェントのトランスミッション機構はセイチェントのものとほぼ同一で、クラッチはモノディスク。
しかし、セイチェントと違っている点は、4段変速装置がシンクロメッシュ付きでなく、《変換容易システム》と呼ばれる変換クラッチ、いうなれば自転車の変速機にかなり類似したものとなっています。
13CVの初期モデルでは、ドライブシャフトはかなり細めに作られていましたが、パワー増大にしたがって序々に強化されるようになっていきました。

どうです、みなさんが乗っているチンクエチェントが、いかに優れた合理性や機能性に溢れているか再認識いただけたでしょうか。
次に乗る時には、ジャコーザ氏の細かくも大胆な発想や工夫の数々を思いやって乗ってみてください。
ますます、あなたのチンクエチェントに対する愛着は大きなものになっていくことでしょう。

 
1959年当時のフィアット社ラインアップ。チンクエチェントはやっぱりかわいいですね。ところで500、600、1100、1200、1800、2100・・・、何種類分かります? チンクエチェントの解剖図。スケルトンで見るとこうなっているんですね。小さなカラダにクルマとしての必要充分なスペックが詰まってます。

人々の生活を豊かにしてくれたチンクエチェント。素敵な雰囲気ですね。
(いずれも当時の写真より)

*資料と写真協力=フィアット500クラブイタリア
*本記事と写真の無断転用はお断りします。